樽前山は札幌近郊で気軽に行ける山として人気があります。

コースも明瞭、そして比較的短時間で登れるため初心者の方も多く訪れます。

美しい火山地形や高山植物のお花畑が目的で訪れるリピーターも。

今回は、そんな樽前山の魅力やコースについて紹介していきます。

火山活動の様子

樽前山は過去に何度も噴火しています。

9100年前に誕生した樽前山は、
2500年前と寛文7年(1667年)、元文4年(1739年)に大規模噴火
慶応3年(1867年)、明治7年(1874年)、明治42年(1909年)に中規模噴火が、
直近では昭和53年(1978年)~昭和56年(1981年)にかけて小規模噴火が起こっています。

平成12年(2000年)には火口の温度上昇があり、外輪山の内側は立入が制限されました。

平成30年(2018年)現在、気象庁発表の噴火警戒レベルは1で平穏な状態が続いていますが、
火山防災協議会では引き続き外輪山内側の立入自粛を求めています。

樽前山の活発な噴煙 B噴気孔群(左)とA火口(右)の様子
樽前山のおすすめポイント
日によって違いますが、けっこうモクモクしているのが見られます。

樽前山の火口原は立入禁止出典:苫小牧市HP

立入禁止や立ち止まり注意の場所もあるように、
樽前山は非常に活発な火山なので、火山情報には注意する必要があります。

高山植物

続いては高山植物についてまずは文字だけで。下の方で写真も紹介しています。

樽前山は、標高が低い割に高山植物がたくさん観察できる山としても人気ですね。

約20種類の高山植物が観察できるといわれていますが、保護団体の調査では約60種類ほどが確認されています。

5月~7月にかけて通称お花畑コースでは、

  • コケモモ
  • ウコンウツギ
  • コメバツガザクラ
  • イワヒゲ
  • イソツツジ
  • マルバシモツケ
  • イワブクロ

などが咲き、花の観察や撮影目的の登山者も多く見かけます。

山には登らずに花の写真だけを撮りに来ている人もいますね。

写真教室よりも上達が速い!自宅でラクラク上達♪一眼レフカメラ講座

コース紹介

樽前山には、

  • 東山コース
  • お花畑コース
  • シシャモナイコース(苔の洞門コース)
  • 錦岡コース

の4コースがあります。

登山者のほとんどは7合目ヒュッテから入る、東山コースお花畑コースを利用しています。

シシャモナイコースは苔の洞門の一部で崩落があってから利用されなくなり、ほぼ廃道状態になっています。

錦岡コースはアプローチに営林署が管轄する長い林道を利用することになり、林道ゲートは開いたり閉まったりなので車の利用は難しいですね。

仮にゲートが開いていても、
林道はかなり荒廃している区間があり、一般車両で林道の最終地点までたどり着くことはできないでしょう。

徒歩での利用ということになりますが、
長い林道歩きを強いられる上に、わかりやすい案内標識もなく、
しかも熊もそれなりに出るのでこのコースを利用する人は極稀です。

コース上の名称

樽前山には、火口や噴気孔、通称で呼ばれる場所などがあります。

その他、特徴的な地形や岩などと合わせて紹介していきます。

図にするとこんな↓感じです。

樽前山の火口原の立入禁止エリア
続いて、それぞれについて詳しく書いていきます。

7合目ヒュッテと駐車場

7合目には管理人さんが常駐するヒュッテがあり、
ヒュッテの隣には約70台止められる広い駐車場があります。

土日や休日の午前中は満車になり、林道脇に長蛇の縦列駐車ができます。

7合目ヒュッテには二つの登山口があり、
展望台を経由し、東山に達する通称「東山コース」と、風不死岳の登山口も兼ねている通称「お花畑コース」があります。

東山コースは外輪山最高点の東山まで最短距離で登れるので一番人気のコースです。

お花畑コースは、高山植物の観察などゆったりと歩きたい人に人気のコースですが、東山までは遠回りになります。

東山コース

駐車場から歩き始め、40mほど標高を上げると「展望台」に出ます。

登山をしない観光客はこの展望台まで登ってきますが、
地面は軽石が厚く積もり、傾斜もあるので、転びやすく、サンダルやヒールで歩くことは困難です。
…それでもヒールのお姉さんとかたまにいますけどね。

木製ベンチが何個かあって、支笏湖や恵庭岳が展望できます。

展望台を通過し、潅木帯を抜けると視界が開け、階段のある登山道が現れます。

そこそこ長い階段が終わると、
登山道は山腹をトラバースしながら徐々に標高を上げ、右カーブのあと直線になると間もなく外輪山です。

外輪山に出ると迫力のある溶岩ドーム(1041m)が眼前に現れます。

樽前山のおすすめポイント

※この溶岩ドームは110年前の明治42年(1909年)の噴火で出来ました。
わずか2日間でこれだけのドームが盛り上がったそうです。びっくりですねΣ(・ω・ノ)ノ!

樽前山のおすすめポイント

ここでコースは左右に分かれますが、
右の急斜面を登れば外輪山最高点の東山ピーク(1021m)で、
左は奥宮・西山方面に向かいます。

東山山頂
樽前山のおすすめポイント

外輪山を一周してみよう

時間があれば外輪山を一周してみましょう。

2時間もあれば一周できますしね(。・・。)v

※外輪山の内側にある巨大な火口原は1667年と1739年の大噴火で出来たものです。

1739年の噴火のあと、火山灰が西風に乗って降り積もったため樽前山の外輪山は東側だけ高くなっていて、西側は平坦になっています。

外輪山を反時計まわりで紹介します。

東山コースで外輪山に出たところの分岐から左に折れ、なだらかな道を行きます。

小さな丘を越えると道は二股に分かれます。

ここは二重山稜と呼ばれる場所です。

二重山稜は二股に分かれたあと、すぐに合流しますので左右どちらでも好きな方を歩きます。

二重山稜
樽前山のおすすめポイント

※二重山稜は1739年の噴火のときに降り積もって出来た稜線の上の部分が、あとで崩れ落ちてできた地形です。

二重山稜線付近に咲くコマクサ
樽前山のおすすめポイント

※二重山稜周辺の砂礫に、コマクサ(6月ころ)を見つけることができます。

もともと樽前山にはコマクサはありません。

本来ここにいるべきじゃないのに、どこかの誰かが勝手に種をまき繁殖したようです。

生態系の維持のため環境省が毎年このコマクサを駆除していますが、生命力が強いのか、毎年のように見ることができます。

二重山稜が合流したところに樽前山神社奥宮があります。

樽前山神社 奥宮
樽前山のおすすめポイント

お参りしたら稜線を下り西山ピーク(993m)を目指します。

稜線を下りきったあたりは外輪山では標高が最も低い区間で、登山道に巨大な亀裂がある場所があります。

ここは覚生川(おぼっぷがわ)の源頭部です。

右上から左下に走る亀裂が覚生川源頭部、正面のピークは西山
樽前山のおすすめポイント

覚生川源頭部を過ぎるとまもなく西山に取り付きます。

※西山は外輪山の一部ではなく、樽前山誕生前からあったものです。

西山の内側(北東側)基部にあるガケ(上の写真右端に見える三角形の部分)は1667年、1739年の大噴火で火口原ができた時に削られたものです。

急な斜面を登りきると、西山ピークへの分岐です。

西山手前の分岐
樽前山のおすすめポイント

分岐を左に行けば間もなく西山ピークに到着します。

西山ピークからは溶岩ドームの上部にある黄色いB噴気孔群がよく見えます。

また、西山ピークには火山観測用の機械が何個も設置されています。

ドーム右の白い楕円の部分がB噴気孔群、ドーム山頂から上がる噴煙はE火口
樽前山のおすすめポイント

西山山頂の観測機器
樽前山のおすすめポイント

西山を下り、先ほどの分岐を左に行き、斜面を下ると道は平坦になり、お花畑コースとの分岐付近まで緩やかな道が続き、高山植物も多くなってきます。

この区間は溶岩ドームに一番近寄ります。

迫力のある溶岩ドームが間近に見える
樽前山のおすすめポイント
ちょっと鬼ヶ島っぽい感じに見えるのは私だけですか?

溶岩ドームの直下にはK点(火口原西側地熱域)と呼ばれる地熱域があり、気象庁などが地熱の温度を観測しています。

この一帯は冬でもところどころ雪が溶けていて、地熱が高いことがわかります。

K点で観測作業中の室蘭地方気象台の職員
樽前山のおすすめポイント

登山道脇にある巨大な岩を過ぎるとシシャモナイコースの分岐です。
現在は立ち入り禁止のロープが張ってあり、シシャモナイコースへ下りる踏み跡は判然としなくなりました。
シシャモナイコース分岐を過ぎるとお花畑コースとの分岐になります。

分岐の標識
樽前山のおすすめポイント

左に行けばお花畑コース経由で下山することができ、右に行けば東山ピークに向かいます。
東山に向かうとルートは緩やかに傾斜が増し、そそり立つ外輪山の尾根上を歩くようになります。
左手を見降ろすと7合目ヒュッテの駐車場が小さく見えます。
右手には溶岩ドームの上部の亀裂からD火口の噴煙が見え、ドームの手前にはF噴気孔が見えます。

ドーム中央のV字の中に見える噴煙がD火口、ドーム右下の噴煙がF噴気孔
樽前山のおすすめポイント

登山道の真ん中に斜めに立った金庫のような四角い岩が現れたら間もなく東山ピークです。

金庫のような形の岩(師匠命名)
樽前山のおすすめポイント
私には、絶妙にバランスを保ち続けている四角い岩としか名付けられません( ´ー`)
そういえば金庫岩って旭岳にありますよね。ニセも。

東山山頂
樽前山のおすすめポイント

東山ピークから広い急斜面を下ると東山コースへ下りる分岐です。

お花畑コース

7合目ヒュッテの前の登山口から歩きはじめ、しばらく樹木が鬱蒼とした道が続きます。
徐々に視界が開けてきますが、このあたりではモウセンゴケを見ることができます。

モウセンゴケ
樽前山のおすすめポイント

木がなくなり完全に視界が開けるとお花畑のはじまりです。

お花畑コース。正面に932m峰(左)と風不死岳(右)が見える
樽前山のおすすめポイント

正面に932m峰と風不死岳、左手に樽前山外輪山、右手に支笏湖を見ながら、なだらかな道を歩きます。
登山道周辺では

  • コメバツガザクラ(5月)
  • ウコンウツギ(6月)
  • イワヒゲ(6月)
  • イソツツジ(6月)
  • マルバシモツケ(6月)
  • イワブクロ(7月)

などのお花畑が見られます。

コメバツガザクラ
樽前山のおすすめポイント

ウコンウツギとイソツツジ
樽前山のおすすめポイント

イワヒゲ
樽前山のおすすめポイント

マルバシモツケ
樽前山のおすすめポイント

イワブクロ(タルマイソウ)
樽前山のおすすめポイント

ポールがある小さな丘を2つ越えると、アパッチと呼ばれる、大きな1枚岩の地面が連続する緩い斜面に取り付きます。

アパッチ
樽前山のおすすめポイント

※アパッチで見られる巨大な岩盤は溶岩と間違われますが、これは1739年の火砕流で、軽石や火山灰が堆積したあと、熱と自重で堆積物がつぶれて一体化したものです。
苔の洞門や樽前ガローも同じ作用できた火砕流堆積物です。

アパッチをすぎ、風不死岳分岐を左に進みます。

風不死岳分岐
樽前山のおすすめポイント

風不死岳分岐を過ぎるとまたすぐに分岐がありますが、ここには標識はありません。

標識のない分岐
樽前山のおすすめポイント
木がV字っぽくなっていて目立つので見落とすことはないと思います。

右に行くと932m峰への近道で、樽前外輪山方面へ行く場合は左に進みます。

※風不死岳方面は樹木がたくさん生えていますが、樽前山周辺は樹木がなく、砂礫がむき出しになっています。
この違いについてですが、木が生えていない一帯は1739年の噴火の時に火砕流が襲った場所とされています。
現在のお花畑は1739年に火砕流が襲ったあとにできたものと思われ、植物の再生に300年近く要していることがわかります。

航空写真を見ると火砕流の範囲(緑がないところ)がはっきりわかる

出典:グーグルマップ

標識のない分岐を左に進み、しばらく登ると、外輪山と932m峰の間にあるコルの上部に出ます。

ここにも分岐があり、右に行くと932m峰、左に行くと外輪山です。

コルの分岐
樽前山のおすすめポイント

分岐を左に進むと、間もなく外輪山にある分岐に出ます。

樽前山のおすすめポイント

分岐を左に進むと東山方面、右に進むと西山方面です。

これ以降は先ほど書いた「外輪山を一周してみよう」と同じになります。

火口原の「立入禁止」って入ってもいいの?

火口の温度上昇があった平成12年以前は、火口原に入ることができ、溶岩ドームの直下を一周したり、A火口をのぞいたりすることができたらしいです。

古い地形図や登山地図には火口原内側の登山道が表記してあります。

立入禁止になって20年近く経ちますが、立入禁止が解除になる日は来るんでしょうか。

樽前山で登山道以外の場所や火口原を歩いている登山者を見たことがありませんが、ネット上では火口原への立ち入りが任意だということで、溶岩ドームに登頂する登山者も少数ですがいるみたいです。

法律違反じゃないしとか個人の自由でしょとか権利あるし自己責任だからよくね?的な考えとか色々あると思うので、
あとはそれぞれの心の中の問題ですかね。

色々とよく考えて理解した上で各個人が慎重に決めることになると思います。

私はそもそも個人的にはあのプリンの最高地点に立ちたいと思わないですし。

ちなみにうちでは、樽前山には初心者やルールを理解していない外国人観光客なども多いことから、火口原への立ち入りが周囲に誤解や混乱を与える可能性があるとの理由で、規制が解除になるまで自粛としています。

最後はなんだか重苦しい話で締めましたが、登山は常に自己責任なのでそれを理解して楽しめればいいですよね!